大型家畜は、色、角の形、大きさをもとに個体識別できるので、焼き印をつける必要がないという。ゾモ、牝ウシ、ヤクとで、少しずつ、色や形態のカテゴリーが異なるが、次のような基準で識別されていた。ゾモの個体識別は、体色、角の形、大きさをもとに行われる。ゾモの体色(mdog、ドク)は、次のように区別されている。ナクポ(nag po「黒」)、カンポ(kham po「明るい茶」)、タースック(khra sug「白と黒の班(2色)・(不明)」)、ゴリ(sngo li「灰ー青色・(不明)」)の4色である。角の形には、リヨン(ru yo「角・曲がった」)、リチョロンボ(ri co rom bo「角・厚い」)、リチョタモ(ru co phra mo「角・薄い」)の区別がある。大きさでは、チェンモ(chen mo「大きい」)、ツンツェ(chung tse「小さい」)をお語尾につけて区別される。ゾモは、このような区別をもとに次のように、名づけられてる。例えば、ゾゾモ・ナクポ・リヨンチェンモ(dzo mo nag po ri yon chen mo)は「黒い色の、曲がった角を持つ、大きなゾモ」を示す名称となるのである。
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ヤク(あるいはデイモ)の名付けをみると、黒い体に白い尾のヤクに対してガマ・カルポ(rnga ma dkar po「尾・白い」)、黒いヤクに対してナクポ、体も尾も明るい茶のヤクに対してゴリ、斑のヤクにたいしてターオといった名前が付けられる。ヤクは、体色、尾の色が区別の指標になっていることが分かる。ヤクは毛が密生し、尻尾も毛が厚く短いのに対し、ゾモは尻尾が薄く、長く、両者は明瞭に区別できるという。