チベット高原万華鏡 生業文化の古今の記録を地図化する モザイク柄のヘッダ画像

チベット高原万華鏡テキストDB

「チベット高原万華鏡テキストDB」では、フィールド調査の記録や文献資料に記録された牧畜や農耕といった生業にかかわるテキストを引用し、日本語以外の場合は翻訳も添え、「搾乳と乳加工」「糞」「食文化」「服飾文化」などのカテゴリータグをつけて集積しています。地図上にはプロットできない情報を含め、民族誌や旅行記、史資料の中にバラバラに存在していた生業にかかわる情報を検索可能な形で統合して見える形にすることで、新たな研究を生みだすことを目指しています。

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「チベット高原万華鏡テキストDB」の使い方
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糞
ロバの糞が燃料では鉄は溶かせないように、力のない語りでは事を成し遂げられぬ。
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糞
羊は小さいときから大人になるまで、昼間は山で草から栄養を摂取し、夕方には村の羊小屋に戻ってきて昼間食べた草を腹の中で糞にして羊小屋に排泄する。糞が乾いたら一家の主の台所の燃料となる。火として燃えたあとの灰は馬や牛などの小屋や(人間の)便所に撒いて、その上に羊の尿などが排泄されると、徐々に肥料になる。冬と春にその肥料を畑に運んで撒くと、作物のよい肥料となる。
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食文化
比較的乾燥している処には、ソーダノキ(Nitraria Schoberi)が豊富に生えている。……その甘酸っぱい漿果は……ツァイダム地方の人間の常食となり、また家畜の飼糧となっている。地方住民、蒙古人、タングート人は、晩秋に、枝のままよく乾いたソーダノキの漿果を採り集めて、一年分の貯蔵をする。この漿果は、ザムバと雑ぜて、煮て食ったり、またその甘酸っぱい煮汁を飲んだりする。
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宗教的行為
毎年1回、8月に、蒙古人は、柴達木からオドンタラ(星宿海)へ、犠牲を持って祈願に出かける。この犠牲は、7匹の白い獣(1頭のヤク、1頭の馬、5頭の牝羊)から成り、頸に紅いリボンを結んで、附近の山へ放たれる。
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食肉加工と部位名称
蒙古人は、肉のほかに、(狩った野生)ヤクの心臓と血とを持ち帰る。彼らは、これを内臓疾患の薬としているのだ。毛皮は、丹噶爾の市へ行って商われ、尾及び側腹の長い毛は、縄になわれる。
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植物と動物
オロンゴ(羚羊)の血は薬とされ、角は種々な妖術の道具に使用される。その表面にある条痕によって、蒙古人はその運勢や事の成否を占う。また蒙古人は、ラマを埋葬した場処に、この角を立てて目印とする。大部分の蒙古人は、死者を地上に抛り放しで置くが、その場合もまた、死骸の周りにこの角を立てる。この目的のために、角は、西蔵から帰る巡礼者によってハルハに持って行かれ、非常に高価で商われる。
367
植物と動物
蒙古人は、もしもオロンゴ(羚羊)の角で鞭をつくり、それで馬を駆る時には、馬が早く疲れるようなことがない、と固く信じている。
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糞
火起こしをする主婦は起きて用を足しに行ってから、しるしばかりの掃除をしたあと、まず最初にかまどの灰溜まりの中の前日の灰を書き出して、家の外にある糞の山あるいは家畜小屋に撒く。
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食文化
そんな秋の季節が訪れると、刈り入れや脱穀、穀物の蔵納めなどで忙しくなるので、毎年の慣例に従って、草刈りの後三日間休みをとる。そのあいだに羊を一頭つぶして贅沢を楽しむのだ。その日、あたしは肉をゆでる係で、ツェランは内臓を洗う係だった。内臓を洗う前に肉をゆでることはほとんどないので、そろって腸洗いの手助けをすることになった。あたしは銅製の鍋にぬるま湯をいっぱい入れてわざとツェランのところへ行った。
370
宗教的行為
父さんが生きてた頃は、土地神に捧げるために毎年山羊や羊を生け贄にして、丸焼きにしてた。それは父さんの果たすべき務めだった。問題が起これば、土地神ゴンポ・ラグルがすぐさま父さんのもとに駆けつけて、あらゆる災いを取り除いてくれた。これは本当の話だよ。
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交尾・出産・去勢
ヤクを去勢する(phya byed paまたはrna phab pa)といって、1-2歳の仔畜のとき、吉日を選んで睾丸を取り除く習慣がある。初めに仔畜を紐で縛り、睾丸の根本の部分をしごいてから、小刀で切れ目を入れて睾丸を二つ取り出し、そのあとに毛織りのテント用の反物を燃やした灰を詰め、白い羊毛でくるみ、紐をほどく。それから尻尾の先端を3回引っ張ると同時に、「はやくよくなれ?(phya yang lag yang)山のように大きくなりますように。マーモット?のように太りますように」と言いながら放す。
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宗教的観念
来客や帰宅する家人の前で灰を撒くのは縁起の悪い不吉なものと見なされる。客人に事が成就しないかもしれないという疑いを抱かせないように、客人が近づいてくるのが見えたら灰を捨てるのをはばかる。
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放牧作業
羊飼いが眠ってしまうと羊は狼に食べられる危険をともなう
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宿営地と放牧地
寒冷地の人々は、ヤクやヒツジなどの家畜へ大きく依存し、耕作地を持たない者も多い。これらの高地牧畜民は、北西部ではジョプ、北東部ではブロックパ、中西部ではラガップなどと呼ばれ、その名称はしばしば貧しさや野蛮さのイメージを伴ってきた。
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食肉加工と部位名称
ワンディ・ポダン県の定住的な農村で広く飼育されてきたブタは、その肉が、土地神への供物や、親族への食事に不可欠な資源とみなされてきた。祭祀や法要のたびにブタが屠られたが、その担い手としてはしばしばラガップが呼び寄せられた。一般にラガップは、準備のため法要の前日には到着し、ブタを屠る。屠畜方法は棍棒を使った撲殺であり、ブタの鼻の付け根を殴打する。食用にはブタの体毛を焼き切る必要があり、着火した麦藁などが使われる。
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経済活動
ラガップが多く住むワンディ・ポダン郡とカジ郡では、ほとんどの高地牧畜民に採集権が与えられたが、牧畜の継続という観点からみると、両者がたどった道は対照的だ。まずセフ郡は、村人はおおむね冬虫夏草の採集に従事し、それによって得られる現金が徐々に村人の生活を支えていった。
377
搾乳と乳加工
バターミルクを火にかけてほどなくすると水分と固形分に分離するが、その水分の方をホエー(phyur khuまたはsngo sing)、固形分のほうをラウォ(la bo)という。
378
宗教的行為
(黄河源流のオボで)一頭ずつの白い馬と牛、九頭の白い羊、頭、皮、内臓を除いた三頭の豚および数羽の白いニワトリが献物として供えられる。最後にこれらの家畜を殺して参詣者一同にふるまわれる。
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経済活動
チベット人は、塩、硼砂、ラサ茶を持ってきて、バルチスタン人の干しアンズや料理用バターと物々交換する。チャンタンの遊牧民は毛の長い羊からとった柔らかい毛糸を持ってくる。カシミール商人はこれを買って帰って、広い知られたカシミヤ・ショールの原料となるパシミナにする。この遊牧の旦那は秋の厳しい寒さに凍えた様子など少しもなく、長い大きな袖から片肌ぬぎになって、露出した胸のあたりは全く寒さを感じないようだ。
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搾乳と乳加工
放牧地の一日は、早朝のバター作りから始まる。これは主に女特に主婦の仕事である。前日にしぼった雌ヤクすなわちディモの乳と、羊・ヤギの乳は、ショーとよばれるヨーグルト状のものになっている。これを羊皮で作った革袋の中に入れ、水を加え、口で息を吹き込んでふくらませてから袋の口をしばり、何百回となく前後に振りまわす。およそ二時間も振り続けるだろうか、この間にバターが分離してくる。バターをとった残りの蛋白質に富んだ液はタラとよばれる。これは彼らの食膳にのぼるが、さらにこれからチーズがとり出される。このチーズは餅のような形や干しうどんのように日干しにし、干しチーズ(チョルビー)などである。
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