チベット高原万華鏡 生業文化の古今の記録を地図化する モザイク柄のヘッダ画像

チベット高原万華鏡テキストDB

「チベット高原万華鏡テキストDB」では、フィールド調査の記録や文献資料に記録された牧畜や農耕といった生業にかかわるテキストを引用し、日本語以外の場合は翻訳も添え、「搾乳と乳加工」「糞」「食文化」「服飾文化」などのカテゴリータグをつけて集積しています。地図上にはプロットできない情報を含め、民族誌や旅行記、史資料の中にバラバラに存在していた生業にかかわる情報を検索可能な形で統合して見える形にすることで、新たな研究を生みだすことを目指しています。

なお、本DBは進行中のプロジェクトであり、引用や翻訳に間違いが含まれている可能性があることにご留意ください。ご利用される場合は、必ず原典を確認してご利用いただければ幸いです。問題があれば、 「チベット高原万華鏡」とはに示したお問い合わせ先にご連絡いただければ幸いです。また、論文、著書などで利用される場合は、本DBを利用したことに言及いただければ幸いです。

「チベット高原万華鏡テキストDB」の使い方
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全 1844 件
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毛と皮革
約3時間後、広げて必要な形に延ばす。フェルト作りの作業をしている間はおしゃべりをすることなく、経文を唱えている。
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住文化
小さな赤ん坊はいつもフェルトに包んで母親が連れ歩く。しかし少し大きくなると、ヤク糞を燃やした灰を敷き詰めたヤクの革袋に入れておく。赤ん坊は灰を交換することでいつも清潔で居心地良くしてやる。
423
毛と皮革
(放牧中)牧夫は肩に毛織の袋を掛けている。その中には宿営地で子供がよりをかけた羊毛の糸が入っている。牧夫は家畜の群れを追いながら、それを撚り合わせて糸にしていき、毛糸玉にしたり、棒に巻きつけたりする。
424
毛と皮革
牧夫は(放牧中に)皮なめしもする。持っていく皮はバターミルクとクリームに漬けて柔らかくしたものである。ずっと擦り合わせたり、よじったり、絞ったりすることで、小さめの羊の皮であれば三、四時間でなめしあがる。
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搾乳と乳加工
夜明けから日が沈むまで一日は長く、場合によっては昼の搾乳用に、雌を宿営地まで連れて帰ることもある。
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放牧作業
そして牧夫は群れに水を飲ませなければならない。その場合、1時間か2時間は家畜をそっとしておかねばならない。この間に牧夫は持参してきた少量の干しチーズか肉を食べる。小さな鍋を持ってきていれば調理をしてもよい。
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糞
(火打ち石は)一回打ちつければ十分であり、火口にはたちどころに燃えるので扇いだり吹いたりする必要はない。そしてついた火をヤクの燃料糞に点火するのである。
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日常の行為と道具
男性も女性も、また年嵩の子どもたちも火打ち石の袋と火口を携帯している。だが低年齢の子どもたちは火打ち石で遊ぶことは禁じられている。
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住文化
年下の子どもたちには、宿営地のかまどで火を燃えあからせるためのふいごを扱わせることによって火の扱いを徐々に教えていく。ふいごは重労働である。というのもふいごは単なる革袋なので、手で開け閉めをして空気を送り込まなければならないのである。だからみなこの仕事は喜んで子どもたちに任せるのである。
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放牧作業
夏になると牧畜民は放牧集団となって草地から草地へと移動する。引っ越しはおよそひと月ごとである。
431
放牧作業
どのムラ?も固定的なテリトリーに所属しており、その村の構成員であればその地域の中を自由にうごきまわることができる。大抵は数家族がまとまった放牧集団ごとに移動する。彼らは互いに近い位置にテントを張る。
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宿営地と放牧地
どの放牧集団にもゴワと呼ばれる頭目がいるが、その仕事は納税に関することだけであり、いつ移動するかを決める権限はない。移動については一つの世帯が決定することはできず、放牧集団に属する全ての世帯が合議で決める。
433
宿営地と放牧地
(引っ越しの際)全ての持ち物は積荷にして役畜にくくりつけ、全ての世帯が一緒に移動する。移動する前に家族の食事を調理してきたかまどの火口に最後の火を点ける。
434
住文化
牧畜民は火の神はかまどの近くに住み着いていると信じており、貴重なツァンパを火に少し焚べることで最後の供物とする。馬に乗って去っていく際に振り返り、ツァンパが焦げて煙が出ているかどうかを確認する。もし煙がまっすぐ空に向かって立ち上っていれば、自分たちのそなえものが受け入れられ、次の宿営地が幸福なものになると考える。もし煙が立ち上っていなければ、問題が起こると予測して、次の宿営地では念入りに注意をしようと考えるのである。
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家畜の個体管理
馬泥棒に対する上手な防護策は馬の尾を切ることである。中央アジアの遊牧民たちによると、尾が短い馬は恥ずべきもので、そのような生き物に乗らねばならない男は屈辱を感じるという。……群れの中の最良の馬たちは騎馬隊風に尾を切られていたため、泥棒たちは手を着けず、長い尾とたてがみのある残りの馬全部を持ち去った。
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経済活動
ナクチュの富裕な商人が所有する500頭ほどのヤクの群れに出会った。この群れは地元の遊牧民に任せられており、彼らはこれの世話をして、一定量のヤクの毛、尾、獣皮、バター、その他の乳製品を供出しなくてはならない。
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毛と皮革
彼ら(家畜追い)は帽子を被らず、長いぼさぼさの髪を風に吹かれるままにしている。全員が、羊毛から糸を紡ぐのに忙しい。羊毛を両の掌でさすり、小さな木片に巻きつけていく。彼らは、群れをおいながら、あるいはキャンプファイアの周りにしゃがみながらこれをするのが大好きだ。
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糞
テントの外側は、石や、もっと多く見られるのは乾燥させた糞を低く積み上げたものによって囲まれている。こうしないと、風や塵が容易にテントに吹き込んでくるのだ。
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食文化
女たちが搾りたての乳を持って家に入ると夕食の時間である。その中身は、同じバター茶、ツァンパで、時には羊の乾燥肉や生肉が加えられることもある。生肉は大変体に良いとされている。
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宗教的観念
ドュー(dud)あるいはデ(dre)は悪疫の神々で、つねに災難を企てている。夜、馬を追い立ててしまい、旅人を遅らせたりもする。大隊商沿いの地域は、悪魔(トンデ)が活躍する場所として有名で、キャラバンの男たちは馬やラバがどっと逃げ出すことのないようにと、特別の注意を払う。
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