「チベット高原万華鏡テキストDB」では、フィールド調査の記録や文献資料に記録された牧畜や農耕といった生業にかかわるテキストを引用し、日本語以外の場合は翻訳も添え、「搾乳と乳加工」「糞」「食文化」「服飾文化」などのカテゴリータグをつけて集積しています。地図上にはプロットできない情報を含め、民族誌や旅行記、史資料の中にバラバラに存在していた生業にかかわる情報を検索可能な形で統合して見える形にすることで、新たな研究を生みだすことを目指しています。
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ゴロクでは1000頭のヤク、2~3000頭の羊、1~200頭の馬を所有している世帯は豊かな家とされ、2~30頭のヤク、300~400頭の羊、10~20頭の馬しか所有していない世帯は貧しい家とされ、全く財産を持っていない非常に貧しい人は、富裕者の使用人になる。
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毎年ゴロクでは、彼らの国の様々な場所で、1~200の家族が集まり、3~700人の男女が集まり、Lojagと呼ばれる毎年の略奪遠征を始めるに適した日を話し合う。
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(ヤンパチェンの付近)ここでは、多くのビャクシンが生えていて、その乾燥した木が薪としてラサに持って行かれる。
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そのくらいの時間には、酸乳の表面に細かい脂肪分の塊 (mar sil) が出てくる。これが一般に加水する (zho chu rgyag、ショチュを加える) 目安である。ショチュの加え方は、酸乳が少し冷えているように見えたら、適量適温の温水を注ぎ、再び攪拌すると、脂肪分の大きな塊 (mar rdog) が上がってくる。もし少し溶けているように見えたら、適量の冷水を注ぐ。それもまた季節の寒暖や天候の違い、そして一日の時間帯の寒暖などに合わせることが非常に重要である。
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塩はヤクよりも羊に積むことが多く、羊は5catty(斤?)の荷を両側に持って行く。キャラバンには約千頭の羊がいて、夜にそれを降ろして、朝再び積むのは作業が非常に多くなるので、荷物は12~15日間の旅程中に降ろすことはない。羊は、石や少し高いところを探し荷物を置いて、その上で眠る習慣がある。
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ナクチュの東部においては搾りたての生乳を加熱することなく、そのまま攪拌する習慣がある。攪拌の手順について、生乳を攪拌する人々の言うには、生乳は酸乳よりも濃度が薄いので、バターが早く取れる上、クリームを取り出していないので、取れるバターの量も多いという特徴があるという話である。
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ミルクを温めて桶に注ぎ、酸乳を少し加えて布で覆い、暖かい場所で12時間放置します。夜、凝乳を薄い綿の袋に入れ、24時間吊るして脱水させます。すると、白く非常に良いチーズができあがります。
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冬季など寒い季節には、酸乳が冷たくなり過ぎることがあり得るので、第一胃または1頭分の革袋いずれか(使う方)を鉄鍋でとろ火で温める。火かき杓子など、金属製のヘラを温めたもので、第一胃の外から温めるなどの策を講じて、酸乳を温めておく。
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もう一つの種類のチーズは前者のチーズより好む人もいて、沸かしたミルクに少量の酸乳を加えて、ミルクが薄くなって底にチーズができるまで熱します。このチーズは手で捏ねるとゴムのようになり、長くのばしたり結び目を作ったりボール状にすることもできます。
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また、桶を徹底的に洗浄にして、6ヶ月間ミルクを入れて洗わずにおく。半年後には桶の中に1インチ程度の厚さの素晴らしいチーズができあがる。
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酸乳を振盪する容器が胃袋か革袋である場合、バターが出来たら外から右へ左へと転がして、ゆっくりと振盪して、バターの塊を一箇所に集める。それができたらバターミルクを別の容器に取りだして、バターは胃袋か革袋の隅にひとまとまりになるようにして、紐できつく縛った上で、冷暗所に置いておく。翌朝記憶の低い時間帯に胃袋ないし革袋から取り出して、バター保管箱に溜める。
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(攪拌・振盪を終えてまとまったバターの塊を)バター保管箱の中に5−6日間ほど溜めて、それなりの大きさの塊にできるくらい溜まったら、(箱から)バターを取り出して、よく練り、少し大きなバターの塊(mar ril または mar ltang)にする。
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(溜めたバターを水洗する)そのとき、牧畜民女性たちは手をきれいに洗ってから、清潔なたらいの中に冷たい水を半分ほど入れ、その中で攪拌・振盪済みのバター (mar dkrog) を小さく切って、水の中でよく練る。両手で叩きつけるようにしながら水を出していく。胃袋もしくは革袋の中にぎゅっと力を込めて押し込めるやり方もある。順番にしたがって進めていく。
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(バターの水洗を終えて)バターの塊ができたら、毛織りの袋の中に、ヤクの尻尾の毛を含む剛毛の類で包み、乾燥した冷暗所に安置する。
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他にも牧畜地区の一部では、バターの塊の中に川石を入れておく習慣もある。それというのも、川石は長い間水中にあったものなので、冷却効果があり、バターが腐敗して悪くなるのを防ぐ力があると年配者たちが言い伝えている。
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バターミルクには2種類ある。(一つは)酸乳を攪拌してバターを取り出したあとに残ったもので、酸乳より薄く、酸味が強い。また(もう一つは)生乳を攪拌してバターを取り出したあとに残ったもので、酸味がさほどないものの二種がある。
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バターミルクは乳製品の中でも少し劣ったものと見なされる傾向があるが、実際には昼間暑い時などの喉の渇きを癒やす最高の飲み物であり、牧畜民が放牧に行く時には小さめの革袋や胃袋の中にバターミルクを入れて持って行き、チャンタン高原などでは夏、秋の暑いときの渇きを癒やすのである。
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他にもバターミルクを使って麦焦がしを練って団子 (spags) にする習慣もあるし、バターミルクに煎り麦を入れて食べる食べ方もある。
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さらに仔羊皮ツァルをなめす際に、バターミルクは毛並みを整える?(spu gra legs su gtong)ため、また色を白くするための主材料として使われる。
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後者の仕事(皮の保存処理)では、最初に皮を水に漬けて、ナイフで肉片を削り取る。その後、皮を太陽にさらして、腐ったバターとヤクか羊の脳を混ぜたものを塗り、手で強く擦る。バターは皮を柔らかくし、脳は白くする。そして丸めて紐で縛り、太陽にさらして3~4日間、足で転がす。その間、水分が抜けて柔らかくかつ白くなるまで、たまに2人で開いて伸ばす。