「チベット高原万華鏡テキストDB」では、フィールド調査の記録や文献資料に記録された牧畜や農耕といった生業にかかわるテキストを引用し、日本語以外の場合は翻訳も添え、「搾乳と乳加工」「糞」「食文化」「服飾文化」などのカテゴリータグをつけて集積しています。地図上にはプロットできない情報を含め、民族誌や旅行記、史資料の中にバラバラに存在していた生業にかかわる情報を検索可能な形で統合して見える形にすることで、新たな研究を生みだすことを目指しています。
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ゴロク地域では、窒息死させるヤクは脚を縛られて横たえられ、重い棒で叩かれ、ひっくり返されて反対側を叩かれ、肉と脂肪の中で血がよく混ざるようにする。西部の牧畜地域(Nagchuka, Chugdso, Dise地域)では、家畜は仰向けにされ、腹部に切れ目を入れて、屠畜人は全ての血が胴体に残るように注意深くしながら、「命の動脈(sok-tsaまたはtse-tsa)」と呼ばれる動脈を抜き取る。
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562
西部の牧畜民は心臓を突き立てて屠畜することもある。ヤクの場合は肩と首の間に前に向けてナイフを差し入れ、羊の場合は肩甲骨の下に串を突き刺す。
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563
(ヤクの屠畜は)最初に肝臓、胃と腸が取り出され、枝肉は5つの部位、すなわち肩、臀部、胸に切り分けられる。肝臓は吊るして凍らせ、翌朝に刻んで生で食べるが、たまに調理する。
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564
家畜を何頭か屠畜した場合、余剰のソーセージは胃の中に入れてテントの外で一晩吊るして凍らせる。翌朝最初に外して、必要になるまでヤク糞の中に埋める。糞の山の側面は、犬が登ってあさるのを防ぐために十分な傾斜で作られている。
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(ヤクの枝肉の)5つの大きな部位は、凍らせてヤクの皮で包み、(ソーセージと)同じ方法で(ヤク糞の山の中に)埋める。旅に必要な肉は細長く切って、だいたい1週間ほど吊るす。夜は凍り日中は解凍して、次第に乾燥して、将来の用途のためにテントの中の袋に詰めておく。これらは牧畜地域の慣習で、肉は生で食べるか調理するか、だいたい半々の割合である。
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566
カムでは、たいてい(ヤク肉を)生で食べ、常に適切に凍るわけではなくしばしば腐敗するが、カムの人は少々「高い」ものを好む。
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567
カムや牧畜地域では、5月か6月にヤクの毛刈りをするとき、ヤクを強くするために慣例として首の血管に穴を開けて血を採る。これをするときに、ヤクにはバターの塊を与える。
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568
(ヤクの)血は皿に入れて塩をふりかけて凝固させる。その後、沸騰させて水分を飛ばす。すると調理した肝臓のような見た目のものが出来上がり、スライスしてバターとともに食べる。
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569
羊は肩と臀部の4部位に切り分けられ、カムと牧畜地域ではヤク肉と同様の方法で調理される。
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チベットの非常に古い慣習では、羊肉の脚は重要な客に取っておかれ、宴席では彼の前に置かれる。しかし、それを食べようとしてはならない。もし知らずにそうすると、非常にエチケット違反になる。この料理は「der-den(皿の肉)」として知られ、本格コースの1皿として供され、生の牛肉や羊肉がその上に置かれる。
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ラサの特別な珍味は、生、冷凍の肝臓を切ってツァンパとともに食べたり、羊の肺に調理した米・バター・香辛料を詰めて吊るして干し、必要に応じて調理したり、特別な珍味である羊の頭(主人はder-den(皿の肉)に羊の頭を供するのが非常に良い)、羊の脚で作った煮こごりとツァンパを混ぜたものがある。
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(ツァンパを作るには)大麦を洗い、沸騰したお湯に5分間入れる。水を除いて大麦を袋に入れ、暖かい場所で一晩寝かせる。朝、フライパンで焦げないように棒で混ぜながら炒める。布または革の袋に入れて床に置き、足で前後に転がす。殻が飛ぶように風のある場所に取り出す。水車で挽いてできあがるのがツァンパである。牧畜民は碾臼を使う。
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カムやラサでは、細かな砂を土鍋に入れて砂が赤くなるまで熱し、ツァンバを入れて振り回し、鉄のふるいでふるう方法を用いて炒めることがある。
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牧畜民の女性は、40斤(? catty)の容量のヤクの皮袋を持って、その半分ほどのミルクを入れ、2斤ほどの少量の酸乳加える。そして、袋に息を吹き込み半分を空気にして首もとで縛り、跪いて地面の上で1~2時間ほど前後に転がす。……中身を桶に注ぎ、夏は冷たく冬は温かい水を加える。手を洗い、上に上がったバターをすくい上げ、こねてボール状にし、冷たい水の中に落とす。
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575
大麦を丁寧に洗った後、かまどの上の水の中に入れて沸かし、全ての水がなくなるまで取り出さないようにする。そして、大麦を取り出し竹製の敷物(ネパール、ブータン、シッキムから入手する)か、きれいな毛布の上に広げて冷ます。少々のツァンパと酵母(チベット語pad、中国語chü-tzu)を加えてよく混ぜる。「lum」と呼ばれる茹で上がった大麦を首が細く底に口のある大きな壺に入れて、かまど近くに厚手の布をかけて置く。三日三晩放置する。そして、甘くもなく酸っぱくもない、よい香りがしたら、栓を外してビールを採る。
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30斤の大麦から約5斤の一番搾りが出来上がり、これが最も良く、自分のためにとっておき、友達に与えない。少し酸っぱいか甘いのを醸造したいときには、再度、温水か冷水で壺を満たす。壺は3度満たすことができるが、もちろんそのたびに酒は弱くなり、酸っぱくなり胃に負担になる?。壺から出た残りかすの大麦は牛や豚に与えられるが、ヤクはそれを食べない。
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アラクを作るには、一番搾りの後の大麦を、2つの取っ手がついた大きな容器に入れる。取っ手に通した紐で、大麦に触れないように小さな壺を吊り下げる、容器の口の上に、ぴったりとした鉄か土製の平鍋を置き、氷か、氷が入手できない場合は冷たい水を入れる。容器を暑い火の上に置き、平鍋には氷を維持し続ける。大麦からの蒸気が冷たい蓋に凝縮し、小さな壺の中にアラクとして蒸留される。
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酒を9回醸した酒粕、肉を9回喰らった骨、茶を9回淹れた茶殻、この3つをそなたに進ぜよう。そなた母子の食事としよう。座につく日には、spu? 乞食どもの座の上座に、黒土を切り出した土塊の座をしつらえ、黒い羊糞の敷き物を敷き詰めた。チョルはそこに座るがよい。金の座、トルコ石の座、銀の座は、タクロン家の父子の玉座である。
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座についた男も女もアクを見ながらゲラゲラと笑い声を上げていたとき、土塊の座に黒い羊糞を敷き詰めた上には、小さな親分のチョルが、髪の毛(skra ra ba de)は逆立ち、??(ru ru ba de)はしなだれ、虱と虱の卵のトゥクパを沸かした(ような頭の)、鼻汁を胸まで垂らし、頭も体もないようなどうしようもないみてくれで鎮座していたが
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ケルトゥン王は乾いたヤク糞(lci ba ser skam ma)を毛織の布袋いっぱいと、糞(btsog pa)を入れた毛織の布袋、そして鉄の杭などをそこに埋めた。
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