「チベット高原万華鏡テキストDB」では、フィールド調査の記録や文献資料に記録された牧畜や農耕といった生業にかかわるテキストを引用し、日本語以外の場合は翻訳も添え、「搾乳と乳加工」「糞」「食文化」「服飾文化」などのカテゴリータグをつけて集積しています。地図上にはプロットできない情報を含め、民族誌や旅行記、史資料の中にバラバラに存在していた生業にかかわる情報を検索可能な形で統合して見える形にすることで、新たな研究を生みだすことを目指しています。
なお、本DBは進行中のプロジェクトであり、引用や翻訳に間違いが含まれている可能性があることにご留意ください。ご利用される場合は、必ず原典を確認してご利用いただければ幸いです。問題があれば、 「チベット高原万華鏡」とはに示したお問い合わせ先 にご連絡いただければ幸いです。また、論文、著書などで利用される場合は、本DBを利用したことに言及いただければ幸いです。
681
角形乾燥チーズ(チュルカム)の準備として、(バターミルクを)沸騰させて(浮いてきた)カード(チュルピ)を急ぎ布袋に入れて2-3分吊るしたあと、2つの石の間に挟んで4-5時間脱水乾燥させる。布から丁寧に取り出し、ほどよく水分の抜けたものを様々な長さ(2-4cm)と幅(1-1.2cm)の小さな角形に切り、ホエー(チュルク)の中でほとんど水分がなくなるまで煮る。一本あたり20個ずつ糸を通して輪っかにする。できたチュルカムを3-4日テントの中で室温で吊るしておき、完成したら地元の市場で販売する。
詳細
682
角形乾燥チーズ(チュルカム)以外にも、カード(チュルピ)からチュルタンまたはチュルププと呼ばれる長期熟成チーズが作られることもある。しかしながらこの工程では、カードができたら牛皮(Zhorchutの人々は仔牛、Mongnangの人々はヤクの皮)に詰めて、6か月から1年間熟成させる。3年から20年の長きにわたって保存が可能だという。これは乳タンパク(チュルピ)を長期保存するための保存形態でもある。
詳細
683
長期熟成チーズ(ヒッパ)はカード(ダツィ)をヤク皮などで密封して、長期間(1年以上)熟成して作る。アルナーチャルの長期熟成チーズ(チュルタン)と類似した製品である。
詳細
684
年間を通じて搾乳可能な母牛からは1頭あたり平均約16kgのバターがとれる。半年間搾乳可能な母牛からは1頭あたり年間約6kgのバターがとれる。この他、生乳やチーズ、牛や羊の皮・ウールなどが生産される。畜産物の加工は非常にシンプルである。バターは、牛乳を2~3日桶に入れておいたあと、革袋に入れて均等に振って作る。バターを取りだした後に残ったバターミルクを沸騰させてろ過するとチーズができる。牛乳を発酵させてヨーグルトも作る。 これらの乳製品は牧畜民たちの主要な食品である。
詳細
685
皮の加工も非常に原始的で、牛や羊の皮にバターを塗ってから揉みながら加工し(なめす)、牧民が着る革の服牛や羊皮の袋、革のロープなどの生産・生活用具を作る。
詳細
686
毎年4月から7月が乳量のピークとなるが,搾乳道具は使わずに手作業で搾乳するが、一般的には母牛から搾乳するのは3つの乳首だけで、残りの1つ子牛用にする。良く乳を出す牛は,1頭あたり年間4-5斤(藏斤、1藏斤は2.5kgに相当)のバターを出すことができるが、平均的には2~3藏斤で、乳を出さない母牛は、当地では「カンバ」と呼ぶ。
詳細
687
夜と朝のミルクをバケツ(バター作り専用の容器で,チベット語ではレム)に注ぎ,熱水を少量を注ぎ(乳量の10分の1-2),つまり木の棒で容器を突く,500~600回突いたら別の容器に注ぎ,表面に浮いてきた脂肪分を手で絞り,冷水に入れてバターを作る。バター抽出後のミルクを加熱し,適量のサワーミルク注ぐとタンパク質が凝縮するのですくい上げ,水をろ過して天日で乾燥させるとチーズになる。すくい上げたタンパク質を乾燥させずにボール状に整形すれば乳餅になる。脱脂乳を沸騰させ,ヨーグルトを加えずに1日放置して冷やすとヨーグルトになる。バターを抽出してないミルクを沸騰させ,冷めてから適量のヨーグルトを加え,保温に注意しながら1日経つと甘いヨーグルトになるが,これは放牧地域では良質な乳製品である。
詳細
688
草原には木がないので、牛糞を燃料にする。 牛糞を集めた後、大麦の藁は分割し、大麦の殻を加え、湿った牛糞と合わせて混ぜて練り、大きな椀のような形にして壁に貼り付け、乾燥させて燃料とする。
詳細
689
シャ・プルム・リモム:シャとは肉を意味し、プルムは脱脂チーズを、リモムは藻類を指す。ゆでた肉を唐辛子と藻類、脱脂チーズに加え、弱火で数分加熱し、火から下ろす直前にヤクのバターオイルを加える。シコクビエ粉または米飯とともに食べる。
詳細
690
カード:フレッシュなチーズはチュル・スィンバまたはチュル・ミンバという。カッテージチーズのような乳製品でヤク乳にトゥンという野生のリンゴのエキスを加えて発酵させたものから作る。
詳細
691
チュル・チルペン:ヤク乳を加温し(図4)、トゥンという野生リンゴ(図5)を切ったものを人肌に温めたミルクに入れ、発酵させる。しばらくすると分離してくるので(図6)、それを綿布に包み、黄色っぽくなるまで3-4日置いておく。それから重石で圧縮して適当な形にしたら、台所のかまどの上にかけた竹で編んだマットの上に置いておく(図7)。徐々に黄色っぽい色が茶色みがかった色に変化する(図8)。これがチュル・チルペンである。フレッシュチーズよりも美味。チュル・チルペンとバターオイル、唐辛子(solu krepu)はどんな粉料理や米料理にも合う。
詳細
692
長期熟成チーズ(チュルププ):4-5年もののチーズ(チュルピ)はチュルププと呼ばれる。チーズをヤク皮(mongnang)に詰め、密封すると3年から20年にわたって保存できる(図9)。チュルププはより高価で、モンパの人々にとって文化的にも価値が高いと考えられている。胃痛を治すのにも使われることがある。ほんの少量(5-10g)を取って、地産の大麦またはシコクビェで作った飲み物に混ぜ、胃痛に苦しむ人に与えることがある。チュルププを使った料理もあり、その中でもマルチャンはとても人気が高い。
詳細
693
(ラダックの)チャンタンでは、ヨーグルトはヤギ皮の袋に入れて盪し、バターとバターミルクに分離する。ラダックの他の地域では、ビャクシン製の特別な木桶にヨーグルトを入れてバターミルクを取り出す。ミルクは沸かさずに、inoculumusの成長を助けるべく40-50度程度に加温して、back sloppedして凝結させる。カルギルでは発酵乳製品の命名法は異なっており、生乳をオルジェン、ヨーグルトをオマ、バターミルクをデルバと呼ぶ。
詳細
694
ラボと呼ばれるカード(凝乳)は腐敗しやすく保存できないため、保存性を高めるために乾燥させる。乾燥した製品のことはチュラと呼ばれ、細粒化したものはチュルペと呼ばれる。
詳細
695
トゥット:細粒化した乾燥チーズ(チュルペ)とバター、砂糖を混ぜて作られる。一般的には様々な形や大きさに固めた菓子の形状をしている。冬の間保存され、ロサル(ラダック正月)のときに供される。チャンタンのトゥットはパック(コラックの一種)、凍らせたレバーを一切れ、凍らせた肉を一切れとともに食される?(is almost always used with paq...)。
詳細
696
屠畜した家畜から取り出した内臓に詰めて保存したバターは、宗教上の理由からムスリムにとっては受け入れがたいものである。従って、ラダックのバターには適切な包装技術が必要なのである。
詳細
697
クリーム分離後のスキムミルクを大きな鍋に入れて加熱すると固まってくる。加熱しながらゆっくりかき混ぜる。手触りがつるつるしてくるまで加熱する。6 時 55 分、ザルを鍋の中に入れ、ザルの外側から中に入ってくるホエイ(乳清)を柄杓で掬い取る(写真 14)。そのホエイを上から溢したり、固まった部分にかけたりする。しばらくして、ザルの中のホエイを柄杓ですくい出し、別の容器に入れる。鍋の中のホエイが減り、次第に水分が少なくなる。水分がぬけて柔らかい固まりになったもの(生チーズ)を、ゾムの仔の毛皮で作った袋に詰めて、針と糸で縫い合わせて密封する(写真 15)。これを半年ほど寝かせると熟成チーズができる。
詳細
698
zhorchutと呼ばれる仔牛皮(図13)はブロクパの人々が乳製品を密封保存するために特別に乾燥加工する。凝乳(churpy)を仔牛皮の袋に入れて長期密封保存したものは、チュルタン(図14)と呼ばれる。この方法で何年も熟成されたものをZhorchut Churaという(図15)。熟成が進んだものほど価値があるとされる。モンパの人々の民族食として欠かせないものになっている。
詳細
699
生乳に、昨日のタラを加えて加熱沸騰させる。生乳1kgに対して、タラは0.5-1kgくらいを加える。タラは乳酸発酵が進行して、かなり酸っぱくなっている。このタラの添加は、pHの定価による乳タンパク質の等電点凝固を狙った技術である。更に、加熱して、乳タンパク質を熱変性させ、凝固を促進させる。乳タンパク質が凝固して表面に浮上したら、布に注いで脱水する。布の中に残ったチーズは、チュラ、ララ、オチュル、ホエイはムーシィ、ンゴクシンと呼ばれる。
詳細
700
(チュラ、ララ、オチュルについて)チーズは、脱水した布のまま、重石を乗せて脱水を進める。チーズが十分に脱水したら、様々な形態に成形する。長さ13cm、幅2.5cm、厚さ1cmと細長くしたり、長さ16cm、直系1cmに切り分けてから紐に吊るしてU字状にしたり、長さ3mにもなるように細長く切り分けたりと、様々である。成形した後は、紐に吊るして日陰で乾燥させたり、地面に並べて天日で乾燥させる。ホエイは、チュルクと同様に、捨てるか家畜に与える。
詳細