チベット高原万華鏡 生業文化の古今の記録を地図化する モザイク柄のヘッダ画像

チベット高原万華鏡テキストDB

「チベット高原万華鏡テキストDB」では、フィールド調査の記録や文献資料に記録された牧畜や農耕といった生業にかかわるテキストを引用し、日本語以外の場合は翻訳も添え、「搾乳と乳加工」「糞」「食文化」「服飾文化」などのカテゴリータグをつけて集積しています。地図上にはプロットできない情報を含め、民族誌や旅行記、史資料の中にバラバラに存在していた生業にかかわる情報を検索可能な形で統合して見える形にすることで、新たな研究を生みだすことを目指しています。

なお、本DBは進行中のプロジェクトであり、引用や翻訳に間違いが含まれている可能性があることにご留意ください。ご利用される場合は、必ず原典を確認してご利用いただければ幸いです。問題があれば、 「チベット高原万華鏡」とはに示したお問い合わせ先にご連絡いただければ幸いです。また、論文、著書などで利用される場合は、本DBを利用したことに言及いただければ幸いです。

「チベット高原万華鏡テキストDB」の使い方
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食文化
このチーズを噛めるようにするためには、口の中に入れておくか、水に浸すかして柔らかく戻さなければならない。細粒チーズはスープの味付けに使う。
1002
搾乳と乳加工
バターは原始的なやり方で作られる。丁寧に縫い合わせたヤク皮の袋に乳を注ぎ、二本の柱の間で揺らす。二、三時間も経つとバターができ、できたバターミルクはまた別の用途のために取り分ける。
1003
搾乳と乳加工
バターは生皮の袋に包んで保存する。皮は毛が内側になるようにして水に浸けて柔らかくする。そして縫い合わせ、乾いたら、縫い目はぴったり閉じ、なめした革のように硬くなる。バター保存袋は一袋あたり20ポンドほど入る。こうして密封したバターは何か月も腐ることはなく、また持ち運びもしやすいのである。
1004
屠畜・解体
羊肉、牛肉、また時には豚肉もだが、乾燥させる。どの肉の場合もやり方は同じである。秋の終わり、家畜が一番太っているときに屠畜が行われる。頭はまず取り外され、すぐに調理される。
1005
食肉加工と部位名称
家畜の皮を剥ぎ、内臓を取り出す。血は取り出したら、脂肪を加えて混ぜ、皮に詰めて黒いプディングにする。
1006
食肉加工と部位名称
羊に関しては、後脚を前脚の隙間に通して、乾燥すると枝肉が座った形になるようにする。ヤクと豚は適当な関節で切って全ての肉を風通しのよい場所で天日乾燥させ、すっかり乾燥して硬くなるまで置いておく。
1007
食肉加工と部位名称
乾燥の過程で肉は半分の大きさにまで小さくなってしまう。食べる前には小さく切るのだが、非常に硬くなっている。かなり長く噛まないと何の味も出てこないほどである。
1008
屠畜・解体
屠畜は残虐で野蛮である。まず家畜を縛り、地面に放り出す。そして剣で心臓をひと突きにし、心臓を確実に切るために剣を回転させる。
1009
食肉加工と部位名称
冬の間は食品の保存に苦労することはない。日陰に吊るしておくだけでしっかりと凍結するし、必要な分だけを切りとって日なたに置いて解凍すればよい。
1010
日常の行為と道具
遊牧民は乳製品と肉に頼って暮らしている。肉は自分たちの飼っている家畜だけでなく、狩猟によっても得ている。狩猟では、獲物を捉える際に銃身を安定させる先端(叉)のついた、みすぼらしいガス圧作動方式銃がよく使われている。
1011
食文化
ツァンパは遊牧民たちの間ではごく控えめにしか使われていない。というのも農耕地区から遠く離れた場所では輸送にコストがかかることから、かなり高価なのである。
1012
経済活動
木材はチュンビ渓谷やブータン、ネパールから、カムを除く東チベットの多くの地域に向けに供給されている。高地では建築目的に利用できる木材がほとんど得られないため、火事にはかなりの注意が払われている。放火罪はチベットの刑法の中でも最も罪の重い刑の一つである。
1013
糞
チベット人は柳の木立を好む。こうした木立からもいくばくかの燃料を得ているが、チベットのような寒冷地において最も重要な燃料は乾燥したヤク糞である。料理用に使うために入念に集められ、保管されている。
1014
糞
チベット人は寒いと感じても暖を取るために火を起こすことはなく、単に重ね着をしてしのぐのである。
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経済活動
ディラン郡のブロパは、主食の穀物や塩などを、伝統的に、全面的にウンパに頼ってきた。現在でも主流はチーズ、バターとの物々交換である。バター・チーズ1kgと30杯のブレ (枡) (約30kg) のトウモロコシ、ヤクの生肉1kgは現金売りで100ルピーである (2009年12月9日現在、1USD=43.6ルピー)。
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経済活動
ブロパは、ある特定のウンパの人、その人が住む村と交易関係を結んでいる場合が多い。ブロパとウンパとの物々交換を支えているのは、一種の制度化された親しい友人を意味するナーツァン (Natsan) である。ナーツァンは、家に泊めてもてなし、チーズやバターの物々交換の便宜を図る。この家と家との関係は世代を超えて維持されることも珍しくなく、親戚や家族同様の関係となる。
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食文化
ブロパたちは、ヤクの肉や乳製品も食べるが、主食はブペ (Bupe) と呼ばれるトウモロコシの粉をお湯で練ったものである。他に、コメ、ソバ、ジャガイモなども重要な食べ物である。そのような作物を得るため、ブロパたちは、ウンパの村に下りて行って、ヤクの乳から作った乳製品 (バターとチーズ) や森の幸などと交換する。コメ、トウモロコシ、シコクビエ、ソバ、ジャガイモなどの農作物のほか、アラ (Ara) と呼ばれるシコクビエやトウモロコシから作る酒、塩などを物々交換によって手に入れる。
1018
食文化
バター茶についても、舗装道路ができる前は、茶葉ではなく、他の植物を煎じて使っていたそうである。道路ができ、大量の日常品が入るようになって、生活がずいぶんと変わってきているのである。
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食文化
ラダークの人々は、肉を食さない代わりに、穀物類をはじめ、野菜類、マメ類、乳製品を多用し、必要な大部分の栄養素をまかなっている。とくに、タンパク質の供給源としてのマメ類の意義、タンパク質と脂肪の供給源としての乳製品の意義が注目される。広域調査の結果、冬・春にはマメ類、乳製品、乾燥野菜、夏・秋には新鮮野菜を多用する傾向にあることが把握された。
1020
食文化
肉を摂取しない理由として、食料生産効率の優位性が指摘できる。牛肉1kgを生産するのに植物資源が16.7kgも必要となる。つまり、牛肉を摂取するよりもマメ類や野菜類をそのまま摂取していた方が、より多くの食料を人間は利用することができる。つまり、菜食中心の食生活をしていた方が、単位面積当たりの人口をより多く扶養することができるのだ。肉を摂取ぜず、野菜を摂取する利点がここにある。
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