チベット高原万華鏡 生業文化の古今の記録を地図化する モザイク柄のヘッダ画像

チベット高原万華鏡テキストDB

「チベット高原万華鏡テキストDB」では、フィールド調査の記録や文献資料に記録された牧畜や農耕といった生業にかかわるテキストを引用し、日本語以外の場合は翻訳も添え、「搾乳と乳加工」「糞」「食文化」「服飾文化」などのカテゴリータグをつけて集積しています。地図上にはプロットできない情報を含め、民族誌や旅行記、史資料の中にバラバラに存在していた生業にかかわる情報を検索可能な形で統合して見える形にすることで、新たな研究を生みだすことを目指しています。

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「チベット高原万華鏡テキストDB」の使い方
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毛と皮革
誰もがこういった製革の方法をマスターしている。また、革の加工も職人ではなく、家内の仕事である。
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毛と皮革
牛とヤクの革は主として靴底に用い、その靴底を靴(pabu)のニャンブ製のアッパーに縫い付ける。ザンスカルの土地は岩がごつごつしているので、頻繁に靴底を修理しなければならないが、旅人は休憩中にその仕事を片付ける。その場合、彼らは革を少しの間水に浸けておき、水から揚げると直ぐに薄くて細長い革を当てて、修理箇所に縫い付ける。
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毛と皮革
女性はあまり丈夫でない、かなり柔らかい羊とヤギの革でストール(その素材には毛足の長いヤギの革が特に好まれる)、チュバと同様の要領で仕立てる毛皮のマント、ふいご、物を入れておく袋を作る。バターはヤギの毛皮に縫い付けて運ぶ。羊とヤギの革の残りは子供の玩具、帽子の縁飾り、頭飾りのいくつかの部分を拵えるのに使う。
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毛と皮革
搾乳する場合、よく羊またはヤギの毛皮で作った搾乳袋(persop)を牛の乳房に押し込む。そうすると、牛は袋を自分の子供と思い込み、よく乳を出す。
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毛と皮革
革は膠を作るのにも用いる。その場合、革をずたずたに切り、煮出し液がねっとり粘るまで何日も煮る。この膠は角製の弓幹に牛類の背中の筋膜を貼りつけたり、矢に羽を接着するのに使う。また、白亜をこの膠の溶液に混ぜてタンカの掛絵に塗り、その表面を滑らかにしやすくする。
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毛と皮革
現在、ブータンで使われている糸には、次のようなものがある。天然繊維では、イラクサや木綿の植物繊維、羊毛とヤク毛と絹の動物繊維である。他に輸入品の化学線維が使われている。
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毛と皮革
ブータンは高低差の激しい国で、その国土には標高200m代から7,500m代まである。糸も気候風土や標高によって、それぞれ産地が異なる。
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植物と動物
イラクサは、照葉樹林帯の樹下に生えている草を、根元から刈り採り、皮から繊維をとって糸を作る。『ブータンの花』には、''日本や西洋のイラクサ類とは少し異なり、Girardinia palmataという種類'' とある。褐色のやや太めの野趣に富んだ糸で織られるイラクサの織物は、現在では一般的な織物ではない。ごく稀に、バッグ用の布ベイチュとしてみかけることがある程度である。
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毛と皮革
ヤク毛からは、中央ブータンのブムタン地方特産のヤタ、北方高地のラヤップの衣装やテント、ロープ、ブータン東端のダクパやブロックパの帽子、などが作られる。ヤク毛は白毛と黒毛とがある。
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毛と皮革
現在市販されているヤタの多くは、その名の由来である''ヤ'' (ヤク) の糸の使用が減り、オーストラリア、ニュージーランドからの輸入羊毛が使われている。ヤク毛で織られた布は、チクチクした肌触りが特徴である。
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毛と皮革
マータやセタに使われる羊毛は、中央ブータンや東ブータンの山岳地帯で飼育されている羊から採れる国産品より、品質的には輸入羊毛の方が優れているので、国産羊毛は産地周辺の一部で使われているのみである。
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毛と皮革
ブータンの人々の糸に対する価値観は、絹を最上とする。自国で生産される絹糸、輸入される糸とさまざまであるが、ブータンで使用されている絹糸の中で、もっとも特徴的なものはブラ、とよばれる紬糸である。
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服飾文化
現在では、宗教的な場面で稀にみる程度になってしまったがキシュン、シンカなどの貫頭衣から初まり、キラのような巻衣へ変化し、後に男性のみが外来衣服の形を採り入れた。シンカはやや厚手の地布に、アップリケによって表現されている貫頭衣である。キシュンは、片面縫取織のキラの代表キシュタラ (クシュタラ) の語源ではないかといわれているように、縫取によって表現がなされている。
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毛と皮革
従来、代表劇織物産地は、中央ブータンと東ブータンとされてきた。ブムタンを中心とする中央ブータンは、ヤク毛を主素材とするヤタや、羊毛を素材とするマータ、セタなどの衣装用の綾織物など、毛素材織物の主産地である。東ブータンはその他の素材の織物の産地である。その中で、さらに片面縫取織のキラはクルナ地方、ブラとよばれる野生種の絹はタシガンの先のラディ、などの名産地があった。
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毛と皮革
ヤクの皮は、ズッタ(チベット風ブーツ)の底に使用される。ズッタの筒の部分は、フェルトでできている。ズッタの形はみんな決まっていて、フェルトの糸もほとんどが黒だった。筒のふくらはぎの部分まで切り込みが入っていて、ひざの下をひもでしばってはく。何色もの糸で織ったあざやかなひもには刺繍がほどこされている。……このズッタは、靴底に枯草をしいて、雪道でもじゅうぶん暖かくはける。
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屠畜・解体
トラチャンさんと使用人の二人でヒツジの皮をはいで解体する。頭のついたままの毛皮を干しておく。そして内臓を竹ざるに並べて祭壇に供える。胃袋には、塩と脂肪を詰めて口をひもでしばる。こうして干しておくだけで何年も保存できるのだ。
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食肉加工と部位名称
腸からは三種類の腸詰をつくる。一つは塩とツァンパ、もう一つは血と肉と香辛料、そして三つめは血の腸詰だ。血の腸詰だけはタカリー族独特のものだという。できた腸詰は塩ゆでにしておく。
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食文化
これらの料理につかわれる調理技法は、揚げる、油で炒める(fried)、煮る・ゆでる・せんじる(boiled)、とろ火で煮る(stewed)が主であり、あぶる・火で焼く(griling)、(天火で)焼く、蒸焼き(roasting)はあまり利用されない。というのは、燃料にやる薪やヤクの糞が乏しいためでもある。焼き(baking)はこの頃まだ知られていない。とくに肉料理は加熱調理されたものより、生肉が好まれる。
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食文化
川面にコワを浮かべて投網を打っていた男に会った翌年、男の住むジュンバを訪ねた。そこは昔から漁労と魚食の習慣があった村だそうだ。背後が山で目の前が川、わずかに開けた地があるばかりの村だ。(中略)村の基幹産業は農業だが畑地が狭く、副業として漁労の地、なめし革や革細工を作ってきた。コワや、さまざまな用途の革袋、服や靴そして仏具の太鼓用のなめし革、さいころ博打の台座などだ。ラサから二〇kmほど南西でヤルンツァンポとキチュの合流地点にある村だ。背後が山なので、畑地は少なく、貧しい村だったという。村人は漁労に就く家と革細工の家とあり、それぞれが先祖の仕事を受け継ぎ、他方の仕事に手を染めることはなかったという。
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食文化
漁をするのは男たちで、女は畑仕事にあたる。男たちで漁労に従事しているのは八割ほどだが、村人ならだれでも泳ぎは達者だそうだ。投網や定置網を使うが、かつては網は自分たちで作っていた。が、いまは中国製のものを使う。増水期と寒冷期は漁ができず、一番いい季節は雪解け水が流れ出す春で、春の魚が一番美味しく、または体にもいいそうだ。
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