「チベット高原万華鏡テキストDB」では、フィールド調査の記録や文献資料に記録された牧畜や農耕といった生業にかかわるテキストを引用し、日本語以外の場合は翻訳も添え、「搾乳と乳加工」「糞」「食文化」「服飾文化」などのカテゴリータグをつけて集積しています。地図上にはプロットできない情報を含め、民族誌や旅行記、史資料の中にバラバラに存在していた生業にかかわる情報を検索可能な形で統合して見える形にすることで、新たな研究を生みだすことを目指しています。
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ここでもツァンパとバター茶を常食にしているが、他の地では肉を使って作る料理を魚肉で作る。モモの餡も肉ではなく魚だし、トゥクパも煮汁に魚肉を入れる。ただ、肉と違って内臓は食べない。魚で作るスープもあれば、骨ごと叩いてつみれ団子のようにして食べることもある。三枚に下ろして、包丁で細かく叩いて生で食べることもある。川魚のたたきだ。内臓を取っただけの丸ごとをを塩で茹でて食べもするし、開きにして干したものを油で焼いて食べることもある。
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馬は名声のために重要で、裕福な家庭では良い鞍と装具をつけた、脚が速く精悍な馬を飼っている。彼らは、真鍮で縁取られ七宝で飾られ、よく似合った鐙と鮮やかな鞍敷で飾られた、派手な「北京」衣装の購入に散財する。
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馬の鞍を外すときは、頭を西に向けなければならない。
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チベットのことわざでは、「秋の魚は犬でもたべない。春の馬は王様の口にも入らない(春の魚がとても貴重だということ)」ともいうのだから。
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彼ら(土族)は黒い馬や牛を好む。それは、この色が所有者と家畜の繫栄にとって縁起が良いというシャマニズム的な信仰による。
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仏教徒であっても、牧畜民は自分たちで育てた家畜を屠殺する。家畜は死んでいるよりも生きている方が価値があり、売却や搾乳、ウールや毛が得られるので、自家消費のために少数の家畜を屠るのみである。
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モンゴル人(土族)は自分の馬を去勢する。彼らの多くはこの作業に熟達している。種馬は地面に倒され、局部を熱い湯で消毒する。壊れたばかりのコップの磁器の破片の鋭い刃で切る。陰嚢を開き、睾丸を取り出す。傷口にワインを注いて塩を擦り込み、縫い手の男性の髪の毛に擦りつけて最初に「消毒」した大きい針で縫う。女性の針箱から取り出した3~4本の糸を撚ってこのための粗い糸を作る。最後に、傷口の外に塩を大量に塗り込む。数日間、横たわるのを防ぐために、馬は日中、脱穀場の周囲を歩き、夜は柱に繋がれる。
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この重要な作業(馬の去勢)はシャーマンが縁起の良い日を選ぶ。作業の実施前に、家長は「天と精霊」にお香とヒノキの枝の焚き上げをする。作業の後の7日間、中庭の門には馬の去勢の印としてヒノキの枝と羊毛の束が吊るされ、訪問者は中庭に入ることを許可されない。
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おむつのあて方は日本人のやり方とは違って、あかちゃんの股の間に挟むのではない。両足を閉じさせたまま腰巻きのように四角い布をあて、ビニールをカバーにして巻き、その上からまたバスタオルを巻きつけ、それらが解けないように幅広の腰当て帯のようなもので結ぶ。あとはおくるみで、赤ちゃんの顔だけ出るようにして包むのだ。
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染色という作業が神聖視されていることと、染色方法に個人的な工夫があるため、現在でも染色現場を見学する機会は、織り作業見学ほど多くも容易でもない。それに対し、織り作業は ’’産地'' で述べたように、移動者が都市部に居住しているため、従来の産地まで行くことなしに見学できる。
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現在のブータンでは、織り作業の大部分が女性によって担われているのは事実である。男性による織り作業を筆者は1985年に中央ブータンのブムタンで、高機ティタで敷物を織っている男性、同日同地でかせくりを行っていた別の男性、を実見したのがわずかな経験である。
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''この工芸品に対するスポンサー制度は、ツォンタムとよばれて売買される品と、庇護者や自分自身のためにおられるヒンタム(心織り)とよばれる品の二つの異なった性質の織物を生み出した。''
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社会的威信の階梯に於いてザンラの織り屋は最底辺、鍛冶屋のほんの少し上に位置する。彼らは貧しいが、勤勉だと皆がいう。威信の低さは、まず第1に彼らの貧しさに帰因している。
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牧群の大きい富裕な人は馬や牛の左の臀部に焼き印を押す。羊は耳に大まかな印を切るか、耳を切り取って印をつける。
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羊飼いは、雇われのモンゴル人(土族)の中で最も稼ぐ。それは、彼らに託された動物の価値が高く、最良の牧地を得て急速に繁殖するには、技術と献身が必要だからである。技術は特に仔羊を生む季節に必要である。羊飼いは、家族と同様に扱われる。毎食、家長に示すのと同様の敬意をもって息子の妻が両手で食事を出し、羊飼いの食事は家長と同じく良い食事である。
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肉は常に茹でる。焼いたり炙ったりした肉はめったに食べず、美味しいと思われていない。
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雌牛、雄牛、豚は喉を切って屠畜する。羊はしばしば窒息させる。もう一つの羊の屠畜方法、すなわちモンゴルの伝統的な方法は、頭を西向きに動物をひっくり返して、皮を胸の上で引っ張る。そして皮に切れ目を入れて、屠畜人は手を潜り込ませて心臓を握り、ぐいと引いてちぎる。羊はすぐに死んで、死骸の外に血は流れない。
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全てのモンゴル族(土族)はマーモットの肉を忌み嫌う。マーモットの脂肪は馬やラバの鞍傷の軟膏に使うが、食事としてモンゴル族(土族)は「我々モンゴル族(土族)にとってのマーモットは、ムスリムにとっての豚である」という。
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(雄ヤクが)1-2歳のとき、角の細い個体には去勢を施さずに育てたものをワッハ(これはモンゴル語で野生ヤクを意味すると言われている)という。角が細い場合はその血筋に雌が生まれるということ、また立ち上がるのも早い場合はその血筋の子はよく乳を飲み、早く立ち上がることができると言われている。
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モンゴル族(土族)は羊毛を紡ぐ。老若男女は何もすることがないときに、手一杯の羊毛から紐を引き出しながら粘土製紡錘で紡ぐ。大人の男は歩きながら、少年は牧地で牧群を見ながら紡ぐ。織り手は撚り糸を供給する家庭に招かれる職人である。職人は持ち運びできる織機をラバに積んで、日当をもらって働く。職人はヤギの毛で袋も作る。