チベット高原万華鏡 生業文化の古今の記録を地図化する モザイク柄のヘッダ画像

チベット高原万華鏡テキストDB

「チベット高原万華鏡テキストDB」では、フィールド調査の記録や文献資料に記録された牧畜や農耕といった生業にかかわるテキストを引用し、日本語以外の場合は翻訳も添え、「搾乳と乳加工」「糞」「食文化」「服飾文化」などのカテゴリータグをつけて集積しています。地図上にはプロットできない情報を含め、民族誌や旅行記、史資料の中にバラバラに存在していた生業にかかわる情報を検索可能な形で統合して見える形にすることで、新たな研究を生みだすことを目指しています。

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「チベット高原万華鏡テキストDB」の使い方
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糞
他の周辺的環境に住む牧畜民のように、ドルポの住民もかまどに燃料を供給するために家畜に依存している。山羊と牛の糞を集めることは、毎日の雑用であり、継続的に行う収穫作業でもある。糞は燃料タイプとしては貧弱であるが、その密度が濃く刺激的な煙は、ドルポの人々の間で慢性的な呼吸器疾患や眼疾患を引き起こす。
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経済活動
チベット南西部の塩採掘場は、ドルポの谷の150マイル以上北にある。チベットの牧畜民は、収入を補い、ネパールからの穀物供給を確保するために、毎年塩のキャラバンも行っている。
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日常の行為と道具
(水汲みのほかに)労力を必要とする作業には、常に薪を用意しておくがある。いずれの家庭も、木を切り倒したり、切ったりするときに冬の間に大量に準備をしている。この蓄えは、たまたま森の近くにいった家族たちによって一年を通して補給される。特に、ウシ追いたちは、毎日山ほど集めて、夕方にはそれを家に持ち帰る。
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日常の行為と道具
山岳地アルナチャルにとって、森林は古くから地域住民にとって重要な資源であった。森林は住民たちによって「落葉を集める森林」「薪をを集める森林」「深い森」の3つに区分され、それぞれに異なった仕方で管理されてきた。しかし、その貴重な資源が1980年代に入って急速に失われてくる。有用材は不法伐採が絶えず、また、その価格は高騰していく。近年、地域住民はその保護活動を始めるにいたった。モンパ地域における森林分布と住民によるその利用と管理、およびその変容について捉えてみる。
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農業
高度の違いによる森林分布は、住民の森林への近接性と森林利用に関わっている。ディラン地方の村周辺では、「ソエバ・シン (Sorba shing)」と呼ばれる「落葉を集める森林」が存在するが、その森林からコナラの落葉を集め、とうもろこしの裏作として作られる大麦やソバの肥料として、あるいは雑草の生育の抑制のため、さらにいは雨季の土壌流出を防ぐため、その落葉がトウモロコシ畑にまかれる。この地方では「木」のことを「シン」という。
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農業
この地域は降雨量が多いため、地表に落葉がないと土壌流出が進み、トウモロコシが倒れてしまうことがあるようだ。一般にトウモロコシの播種の約2ヶ月後、トウモロコシの背丈が30cmくらいになったとき、除草して落葉が3〜5cmくらいの厚さにまかれる。牛を飼っている人は落葉に牛糞を混ぜたものを畑にまく場合もある。落葉と牛糞、水を混ぜ、足でこねたものを1週間から20日間くらい置いてから畑にまく。
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糞
また、薪の伐採を減らすために、ヤクの糞の利用を再び進めている。モンパ地方ではかつてはヤクの糞を乾燥させて燃料として利用していたが、煙がたくさん出ることや、伐採して得た薪の方が手軽に利用できるため、森林限界以上の草原を除き、近年はヤクの糞が利用されることはなくなってきた。
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糞
そのヤク糞の利用を進めるため、ヤクの糞から燃料を作成する器具が発案された (写真63)。最初にヤクの糞を燃やして炭にし、それを器械に投入すると炭が固められて棒状の燃料が作成される。この機械の作成費は1台あたり1万6,000ルピーで、WWFから無償でCCAに提供されている。
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糞
燃料として糞利用でいうと、ヤクの糞の他にも、ヒツジの糞も燃料として使われる。加工せずにヒツジの囲いからまとめて出し、乾燥させて使う。乾燥しやすくて火が長持ちするのでチベット牧民は愛用してきたが、近年、ヒツジの糞の利用は減少しつつある。理由としては、1984年から家畜と牧地の個人所有化が進められ、集団所有の牧畜が各世帯の人数ウを基準に配分されたことによって、利用できる牧地の面積が以前より大幅に減少されたことがある。かつては年に4回程度移動していたが、近年では1年に2回しか移動せず、家畜が比較的長くその場にとどまるので、ヒツジの糞が細かく砕かれた状態になってしまって使えないのである。なお、馬の糞は燃料に使わない。
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糞
牧畜民の燃料の主なものは、家畜の糞である。それは秋に牧畜民の子供たちが、冬の宿営地や秋の宿営地などで乾燥した家畜の糞を集め、糞を丸く積んだもの (lci 'bam) をたくさん置いておく。それは、冬に牧畜地域の山谷全てが雪で覆われ、燃料を探すことができない時に役立つ。
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糞
乾燥高冷地Aの気候は非常に寒冷で、7~8月の夏の期間でも雪が降ったり夜間に霜が降ったりする。8月の中旬以降は、だんだんと気温が下がっていくが、節約のために夏の間は暖房目的では燃料を使わない。主に牛糞とヒツジの糞を燃料として使用しているが、それ以外にも手に入るさまざまな野生動物の糞と草を燃料として使用している。糞を利用する野生動物は主に、チルー(チベットカモシカ; Pantholops hodgsonni/[徐 2001: 32])、チベットノロバ(Asinus kiang [徐 2001: 32])、チベットガゼル (Procapra picticaudata [徐 2001: 32])である。
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糞
そして、M村の各家庭の庭の燃料貯蔵庫にどのような燃料を貯蔵するかを外観する。燃料貯蔵庫には、スル (ツツジ科の灌木)、ペンマ (バラ科の灌木)、薪、粉々の牛糞、牛糞、lci hrug? 、馬糞、円盤状の乾燥牛糞、ヒツジ・ヤギの糞などに分けて貯蔵されている。
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糞
それぞれについて述べると、最初のkho lebという円盤状の乾燥牛糞は、春夏秋冬の季節に、家の主婦が家畜小屋と庭の内外で牛が排泄した糞を毎日拾い集めて、一箇所にまとめ、rtswa shugを少し前ぜて、小麦粉を練るようにこねる。そして、まるめて、家畜小屋やphyi raなどの壁に平たく丸い形でくっつける。
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糞
そのように数日して乾いてからはがしとると、kho lebができる。そして、糞置き場の端を補強するように積みおく。かまどの中に入れる時もかまど穴の入り口のほうに端を支えるように置いて、その中にヒツジの糞などを入れたり、上に薪などをおいて燃やすと火がよく燃える。
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搾乳と乳加工
チベット族が作るチーズには5種類あり,チベット語で「Tei」「Aben Tei」「Tei xi」「Shao tei」で,もう一種類は特別に作ったものであり,「jiao tuo」と呼ばれ,胃腸に病に効果がある。
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搾乳と乳加工
牛乳が自然に冷めたら、木製の円筒形撹乳器(直径25〜30cm、高さ1〜2m、木製のミルクピストン棒付き)に注ぎ、少量の熱湯を加えて、棒で500回ほど上下に撹拌し、棒を抜いて両手で撹乳器を握り、円を描くように数回軽く振り、約15分放置し、上部に浮いた黄色のバターをきれいな手で取り出し、きれいな冷水を張った洗面器に3〜5分入れ、取り出して重さを測り、両手で丸いケーキ状の形に叩いていく。
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搾乳と乳加工
バターを取り出して攪乳容器に残ったバターミルクを清潔な銅鍋に注ぎ、少量のホエー(乳酸菌)を加えて竹串でよくかき混ぜ、とろ火で温め、30℃ほどになったら火から下ろし、綿布や毛布で包んで3時間くらいおくと、ヨーグルトができる。円錐型の竹笊に移してホエーをろ過したあと、囲炉裏の上に設置した竹製の網の上に置いて半乾きになるまで乾かすとチーズができる。チーズの重さは1個0.5–1.5kg。
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役利用
チベットのヤクと中国の「黄牛」を掛け合わせた交配種であるゾが、うめき声をあげながらキャラバンの隊列でみすぼらしく荷物を運んだり、険しく岩の多い日向の山肌を根気強く耕していた。
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地形・天候・天体
元来、西蔵人は土地を掘ることを喜ばないが、それは大地にひそんでいる悪魔のたたりをおそれているためで、六七千人も居住する寺院に於てすら自然にわき出る少量の石清水をためて、使用にあてている有様である。故に水は何よりも貴重品なのである。
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食文化
中食は肉饅頭か、肉ウドンを作って食う。併し朝食と同じく麦の炒り粉で済ます者が多い。夕食は禁ぜられている。従って晩に炊煙をたてることは違法である。不時のご馳走には羊肉の水たきがある。羊肉を骨のまま五六寸程度の大さに切り、二三時間水で煮る。そして肉片をナイフで骨からはがして塩と唐辛子粉を付けて食う。
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