チベット高原万華鏡 生業文化の古今の記録を地図化する モザイク柄のヘッダ画像

チベット高原万華鏡テキストDB

「チベット高原万華鏡テキストDB」では、フィールド調査の記録や文献資料に記録された牧畜や農耕といった生業にかかわるテキストを引用し、日本語以外の場合は翻訳も添え、「搾乳と乳加工」「糞」「食文化」「服飾文化」などのカテゴリータグをつけて集積しています。地図上にはプロットできない情報を含め、民族誌や旅行記、史資料の中にバラバラに存在していた生業にかかわる情報を検索可能な形で統合して見える形にすることで、新たな研究を生みだすことを目指しています。

なお、本DBは進行中のプロジェクトであり、引用や翻訳に間違いが含まれている可能性があることにご留意ください。ご利用される場合は、必ず原典を確認してご利用いただければ幸いです。問題があれば、 「チベット高原万華鏡」とはに示したお問い合わせ先にご連絡いただければ幸いです。また、論文、著書などで利用される場合は、本DBを利用したことに言及いただければ幸いです。

「チベット高原万華鏡テキストDB」の使い方
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屠畜・解体
片肌脱いだタングート人は、腰に吊りさげたタール寺刀を引き抜いた。……刃はプスプスと鮮やかに、身を切ることなく腹の皮が縦断され、瞬間に皮が剥がれたかと思うと、膜が切り開かれ……五臓六腑が1つ1つ取り出された。そして杓子で血が鍋の中に汲み出されると、各人てんてこまいの大騒ぎである。
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食文化
腸詰めには二種類がある。まず鍋の中にとられた血の中に、小量のザンバーと、粉末にした塩を入れて掻きまぜると、……箸で器用に腸の口を開いておいて注ぎ入れ、両端を紐でくくって血の腸詰めを作る。
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食文化
肝臓、心臓、腎臓等の臓腑や肉、脂肪を小刻みにして鍋に入れ、それに塩、葱、小麦粉、小量の血を加えて、よく手でぐちゃぐちゃ混ぜて腸詰めにしてしまった。
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食文化
まず血の腸詰めが取り出され……半煮えくらいが一番うまいとされ、……次が五臓六腑だ。……そのうちにグロテスクな頭も取り出されて、眼の周囲の肉から、舌まで一片の肉片も残さないようにきれいに食べられて、付近にその残骸がさらされる。次に肉の腸詰めだが……満腹してくると、残った腸詰め、臓物は他の器に取り出してしまう。鍋には……どす黒い汁が残る。その汁にはまた点々として羊毛が浮かんでいるが、それを今度はうどん汁にして飲むのである。……最後に肉の毒消し役の茶が出されて、楽しい一日が終る。
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食文化
残った臓物、腸詰めを2,3日経って、アルガリ(畜糞)の上で焼いて食べるのも、実にたまらない楽しみとなる。
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宗教的行為
肩甲骨を焼いていろいろなことを占う。……この羊の肩甲骨はそのまま捨てておくと罪だ、と考えられている。彼らは必ず砕いて捨てるか、家畜、家運の繁栄を祈るため、廟の巡回路の樹木や、灌木に、……紐で結びつけ吊しているのを見かける。
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家畜の名称
羊は牧畜地域では非常に多く飼われ、繁殖力も大きい動物である。そればかりでなく、牧畜民の日常の食べ物の主たるものは羊肉、飲み物の主たるものが羊のヨーグルト、着るものの主たるものが羊皮というように、牧畜民の暮らしの上で特別な役割を果たす動物と見なしてよい。
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食文化
主な飲み物は羊のヨーグルトとミルクである。牧畜民の年配者はお茶を飲む習慣があるが、お茶は中国で生産されるものであるため、高価であり、また珍しいものでもあるようだ。
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家畜の個体管理
秋と春には、「ラツァ(rwa tshwa、角塩)」という、塩(lan tshwa)とヨーグルトを混ぜたものをヤクの角(g.yag rwa)で雌雄のヤク1頭1頭の口に注ぐことになっている。それも牧畜民の重要な季節仕事の1つである。
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家畜の個体管理
牧畜民は夏と秋、春の季節に家畜に塩を与えなければならないのだが、どうするかというと、夏には家畜追いたちは、柔らかで広い日おもての草地の上に、塩で観音菩薩の真言(マニ)や卍、吉祥紐(ペーベウ)などおめでたい模様を描く。そうすると、家畜たちが黒土が露出するまできれいになめあげる。家畜に塩をやった跡にできた模様は、かなり遠くから見てもはっきりと見えるほどで、その模様は何年にもわたって残るのだ。
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家畜の名称
第三に年齢に基づく名付け方については、1歳にはbe'u、2歳にはya ru、3歳は雄はg.yag gu、雌はshadまたはthul maである。また、3歳でまだ乳を飲んでいる子にはsum yar、4歳から歯が生えそろう(ga gang)までは(雌は)'bri、雄はヤクg.yagと言う。年齢の数え方については、1歳はbe'u、2歳はya ru、3歳はshad、4歳はso gnyis、5歳はso bzhi、6歳はso drug、7歳はkha gang、それ以降は歯が生えそろって1年、2年(kha gang nas lo gcig, gnyis)という数え方をする。
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搾乳と乳加工
また、牧畜民の一部は秋になるとショゲンというものを作る。(ショゲンとは)できのよいヨーグルトにクリームを加えて大きな桶に溜め、フェルトでくるみ、秋営地の糞の貯蔵庫(lci 'bam)の中にしまっておく。これを晩冬や初春など、ヨーグルトが得にくい時期に使う習慣がある。
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搾乳と乳加工
農業地域の近くに居住している牧畜民たちには、乳加工用の搾乳桶、ヨーグルト加工用の桶、ミルク(を溜める?)用の大桶、バターミルク用の大桶など、木工製品が潤沢に持っており、それらを使ってヨーグルトやバターを効率的に作ることができている。
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搾乳と乳加工
農業地域からかなり遠くに位置する牧畜村では、搾乳桶やヨーグルト用の桶などは木工製品はあっても粗悪なものしかなく、とりわけミルク用の大桶やバターミルク用の大桶などは全く手に入らないので、雌ヤクの革製のミルク袋と、さらに大きいバターミルク袋を使っている。これは(羊1頭分を使った)革袋の中でミルクを振盪させるものである。こうしたものを使って簡単に良質なバターを作ることができるのである。
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食文化
昼食も朝食と変わりなく、お茶とザンバーだけですます。この時ザンバーは茶でこねて、手で小さく丸め、それを水を加えた唐辛子汁につけては食べる。時には大根の酢漬を副食物としてザンバーと食べていることもある。
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食文化
夕食は肉うどんか、チベット特有の「トクパ」が作られる。トクパはかめ型の素焼の鍋に水をかけ、その中に小刻みの肉や大根に少量の脂肪と塩を入れて煮え立つと、ザンバーを少量ずつ掻きまぜながら入れてどろどろとし、とろ火で長くぐたぐたと煮て作った、ザンバー粥である。
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毛と皮革
(皮を)十分に水漬け加工したあと、3回から4回、燻す必要がある。1回目に煙を当てたあと、皮の表面に塩を塗って一日置く。翌日再び2回から3回燻す。皮の表面に塩を塗るのは、主には柔らかくするためである。
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毛と皮革
ヤクの皮はホエーに浸し、10日から15日ほど置いておくと、毛が取れやすくなる。毛を取り去った後は陰干しをしなければならない。それもまた、塩水を塗って15日から20日経った後、土中に埋めて4、5昼夜経つと、ようやくなめすのにちょうどいい頃合いとなる。
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毛と皮革
皮をなめすときは裸足で全力を込めてなめす必要がある。なめすのが得意な人であれば、一日二日あれば(ヤクの皮)一枚をなめすことができる。一般に、勤勉な人でないと皮をなめすことはできない。なめし終わったらようやく、革袋の大きさが決まる。だいたい大きなヤクの革一枚から大小の革袋三つを作ることができる。
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毛と皮革
牧畜民はヤクの毛を非常に重宝している。柔らかい毛は白黒斑にしてさまざまな織物にして、馬に荷物を載せるときの敷物や、荷物カバー?(དོས་ཁེབས།)、大小の入れ物?(རེ་འབོག)を作るのに役立っている。ヤクのしっぽなど硬い毛は荷物を縛る紐(དོས་ཐག)やテントの張り綱(ཆོན་ཐག)などに使われている。
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