「チベット高原万華鏡テキストDB」では、フィールド調査の記録や文献資料に記録された牧畜や農耕といった生業にかかわるテキストを引用し、日本語以外の場合は翻訳も添え、「搾乳と乳加工」「糞」「食文化」「服飾文化」などのカテゴリータグをつけて集積しています。地図上にはプロットできない情報を含め、民族誌や旅行記、史資料の中にバラバラに存在していた生業にかかわる情報を検索可能な形で統合して見える形にすることで、新たな研究を生みだすことを目指しています。
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食事は、朝夕の二食で、朝は麦の炒り粉のみ、夕は肉ウドン乃至肉団子の類を食する。上流家庭では、時に米飯を食することもある。西蔵は高原であるため米を炊くには、先づ水炊きをし、次にこれを蒸すので、二度炊の手数がかかる。
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西蔵食のときは釐牛(ヤク)や羊の肉を水炊きにした肉塊を、各々ナイフで切りながら食する。又、血の滴る生肉を饗されることもある。冬期中氷らした乾肉なども西蔵食の一品として出される。西蔵食は凡んど肉ばかりというてよい。
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西蔵人には豚肉、魚肉、鶏肉を食べる習慣はない。豚肉は不浄であるとし、魚肉は数多の魚類の生命を奪うことを好まぬとし、鶏肉鶏卵の摂取は仏道修行に障害を与えるとするのである。
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(屠畜・解体後)まず食べるのはリブと各種腸詰めである。腸詰めには、血のソーセージ、肉ソーセージ、小麦粉入りソーセージ、レバーソーセージなどがある。血のソーセージは、細かく刻んだ肉、脂肪、調味料、塩、血液を混ぜ合わせ、小腸に注ぎ、両端をしっかりと結び、沸騰したお湯の鍋に入れて2回煮てから、血液が完全に凝固してから食べると美味しい。
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チベット暦10月、牧畜地区はすでに寒く、この時期、牧畜民は家畜を屠殺する時期である。彼らは通常、肥えて年をとった牛や羊を屠殺する。屠殺の方法は、牛と羊の腹部を鋭利なナイフで裂き、手を入れて心臓を切断する。家畜は1分ほどで死ぬ。牧畜地区は天然の大型冷蔵庫で、屠殺後の肉は寒くて風通しの良い場所に保管される。こうしておくと、肉は翌年の6月上旬になってもまだ新鮮さを保つことができる。
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(9)乳製品:ギャツァ県は半農半牧地域だが牧畜の割合が多く、乳製品の種類が多い。県内にはチュルカム(角形乾燥チーズ)、ディシェ(棒状成形フレッシュチーズ)、ディゴル(丸形成形フレッシュチーズ)、チュルト(酸奶酪)、タルショとオショ(バターミルクヨーグルトと全乳ヨーグルト)、チュルシプ(細粒チーズ)、ピマ(ミルクの膜)、チュリュ(腐れチーズ)など8種類の乳製品がある。
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【1】チュルカム(角形乾燥チーズ):バターを抽出した脱脂乳を煮て水分を蒸発させたのち、角形に成形して乾燥させたチーズ。乾燥させておやつとして食べる。
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【2】ディシェ(棒状成形フレッシュチーズ):バターを取りだしたあとの凝乳を2日間自然発酵させたものを棒状に練って食べる。【3】ディゴル(丸形成形フレッシュチーズ):【2】と同じ方法で作られ、丸形に成形したもので、すぐに食べられる。
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【4】チュルト:バターミルクを発酵させてヨーグルトにして食べる。【5】タルショはバターミルクから作ったヨーグルト。オショは糖化作用を経たヨーグルト。栄養価に富み、消化しやすく、老人や小児に適している。
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【6】チュルシプ(細粒チーズ):バターを取りだしたあとの凝乳を適度な温度で発酵させ、2日間天日乾燥させると、細かい粒状のチーズができる。栄養価に富み、家庭やまた旅先で、パツァマルクを食べる時にも加えると、消化を助ける。チュルシプはたいへん広く利用されている。
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【7】ピマ(ミルクの膜):仔を生んだ直後のウシの乳を短時間煮て、乳皮の層を形成したもの。美味しくて栄養価が高い。
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【8】チュリュ(腐れチーズ):バターミルクを加熱してできた凝乳を加温して発酵させたのち、密閉容器に入れて、天日にさらすか火の近くに置いて腐らせる。その後に取り出して乾燥させる。きつい臭いがする。主にトゥクパを作るときに砕いて少し入れると美味しく、解毒作用もある。自宅で消費する他、外出するとき持っていくこともある。
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肉の貯蔵は牛や羊がよく肥っている十月に行うのであって、草が衰え、気候も寒くなり、家畜が痩せてる時期には行わない。屠殺する頭数は裕福な世帯では30–50頭、貧しい世帯では1–20頭である。肉は羊小屋のような貯蔵庫に保管する。肉は貯蔵庫に入れたらゆっくりと食べていく。これがチベットの牧畜民が環境に適応する方法なのである。
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フェルトの丸い40個のゲルの1つであるトルジャ(オイラトの首長)のボロボロのゲルで、ドルジェ王子と私は特に良い風味の冷たいミルクを飲んだ。それは、発酵した穀物をヤクやラクダのミルクに入れ、2-3日間寝かせておくとバターミルクのような味になるという。
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【酥油(バター)を作る】 酥油は生クリームのことで,手作業で作られている。 牛乳を加熱し,チベット語で「Zhuō luō」と呼ばれる柄の長いピストンのついた木製の筒に注いで作る。 ピストンは筒の内側よりやや小さめで,自由に上下に動かせる。 牛乳を筒に注いだ後,ピストンを力強く上下に1000回近く撹拌し,牛乳の中の油分と水分を自力で分離する。 もうひとつの作り方は,温めた牛乳を牛皮製の専用の袋(チベット語で「jia wa」)に入れ,囲炉裏の側で手で揺り動かしながら牛乳の中の油と水を分離した状態で鍋に注ぎ,上に浮いたものを手ですくえばに酥油なる。 科学技術が発展するにつれて,ほとんどの牧民が徐々に「ミルクセパレーター」を使って酥油作りをするようになりました。
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「焼く」という語への感じ方は興味深く、チベット人は肉を茹で、一般的に焼いたり炙ったりはしない。そして、彼らは生肉を好むこともある。
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またチベットの南部のいくつかの地方では、デペというのがあって、バターミルクを加熱したところに温めたホエーを適量注ぎ、かきまぜると、どろどろになってきて、おおよそ煮とけたのち、火にかけていたかたまりを平らにしたり長く伸ばしたりなどしてつくる。上述のチュルレプと同じようなものだという。
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N: バターを攪拌して、マルチャンと呼ばれるバター保管用の竹筒に入れるんですが、それを土の中に埋める人もいます。 K: 土の中にどうやって埋めるんですか? N: 土を掘って、その中に入れたら、上から土をかけるんです。 K: そうしたら腐らないんですか? N: 腐りません。
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言葉は優しいが奥に毒を持つ人に心を許すな 嘘ばかりつく悪い人とは話しをするな
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関係の無い話しはするな 必要の無いものは買うな