チベット高原万華鏡 生業文化の古今の記録を地図化する モザイク柄のヘッダ画像

チベット高原万華鏡テキストDB

「チベット高原万華鏡テキストDB」では、フィールド調査の記録や文献資料に記録された牧畜や農耕といった生業にかかわるテキストを引用し、日本語以外の場合は翻訳も添え、「搾乳と乳加工」「糞」「食文化」「服飾文化」などのカテゴリータグをつけて集積しています。地図上にはプロットできない情報を含め、民族誌や旅行記、史資料の中にバラバラに存在していた生業にかかわる情報を検索可能な形で統合して見える形にすることで、新たな研究を生みだすことを目指しています。

なお、本DBは進行中のプロジェクトであり、引用や翻訳に間違いが含まれている可能性があることにご留意ください。ご利用される場合は、必ず原典を確認してご利用いただければ幸いです。問題があれば、 「チベット高原万華鏡」とはに示したお問い合わせ先にご連絡いただければ幸いです。また、論文、著書などで利用される場合は、本DBを利用したことに言及いただければ幸いです。

「チベット高原万華鏡テキストDB」の使い方
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毛と皮革
ヤク毛の利用で重要なのは分厚くて黒い毛織物である。それらは牧畜民の住まいであるテントを造る材料としてなくてはならないものである。
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住文化
テントの反物の張り替え=テント用の反物を新しく張り替えること。
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宿営地と放牧地
牧畜は「遊牧」という字面からでは想像できないほど窮屈なものです。まず、伝統的な集落ないしは集落連合ごとに季節放牧地が決まっていて、境界を侵すことはできません。他集落の草原を移動するときには、その筋にきちんと挨拶しなければなりません。
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宿営地と放牧地
中国では牧畜も集団化され、家畜は人民公社・生産大隊のものでした。一九八〇年代から家畜の個人所有が実現し、のちに牧野を各戸に分けた結果、ほとんどの草原に針金の柵が張り巡らされました。ーー針金業者はもうかったでしょうね。
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家畜の名称
チベット高原の家畜はチベット種の羊とヤク、ヤクと牛の混血などです。カシミヤ羊もいっとき多くなりました。家畜は財産です。日本人が貯金や株券、土地、家屋をもって財産とするのと同じです。家畜の子どもが増えるのは貯金や利子や配当が増えるのと同じ意味です。これをどう増やしていくか、牧民はいつもそのことを考えて暮らします。
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宿営地と放牧地
伝統的には、アムド・チベットのほとんどの地域では牧野を冬春と夏と秋の三つに区分し、季節ごとに移動する。時期は毎年たいてい決まっている。具体的な日取りは集落の会議で占いにもとづいて指導者が最終判断をし、集落の畜群は一斉に移動する。
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家畜の名称
羊の一般名詞はルクッといえるかもしれない。加齢による一次名詞の変化は下のとおり。羊はオスメスともに一歳はルクッ。二歳になるとオスはラカ、メスはラモ。三歳ではトガソニとツェモ。四歳ではトニガソジェとマモソジェ。五歳ではトガソジュとマモソジュ。六歳ではヒャゼンとカカン。七歳ではオスメスともにカカンとなる。それ以後の数え方はヤクと同じ。
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家畜の個体管理
羊は十歳をすぎれば生殖能力が衰える。そうなると肉にするしかない。年寄りの家畜を持つことは牧民にとってはトクになることではないが、集落の祭で「神獣」とされたものは年取っても殺されることなく草原をのし歩いている。羊だと十二歳くらいまで、ヤクだと十八歳以上寿命を保つそうだ。神獣のヤクや羊を見てさる漢人の社会学者が論文の中で「なんたる浪費」と嘆いていた。確かに浪費と言えば浪費だが、漢人も合理と不合理の間を行き来していて(原文ママ)いるのではないかと想う。
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食文化
野菜は私たちには雑草としか思えないが、菜園や畑からとってきて、洗って、ゆでて、また洗って、もんで、玉ねぎと一緒にフライにしてダラというバターミルクに入れる。この混ぜものは、炒った小麦、大麦、豆をひきわりにした粉を煮て作ったザンとかババと一緒に添えものにする。豆はイギリスのと似ているが、もっと固くて味がない。
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搾乳と乳加工
発酵した凝乳は袋に入れてつるし、乳漿がすっかりしたたり落ちると乾かして、圧力を加え、細長く切ってバターフライにして、スープに入れる。ヤルカンドから馬乳の乾燥凝乳がくるが、これも用途は同じだ。大麦の粉にチャンという特産のビールを少し入れてねり粉にして発酵させると、また変わった食べ物ができる。これはチャンに浸して食べる。
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搾乳と乳加工
良質のバター、砂糖、それに多分干しぶどうかと思われるが、練り粉に混ぜて、ジャムのようにチャパティにつけて食べるとその味は格別だ。新年には丸い平べったい大麦のケーキを作って、真ん中の穴にバターを少し入れると、特別料理ができる。
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食文化
こんなに用途の多い麦粉は、小麦にしろ、大麦にしろ、粉になるまでに穀物を精製する長い工程が必要だ。穀物をシュプ(麦わら製のぼん)に入れて上下に振ると、殻が吹きとび、脱穀場から掃き上げられた小石やごみがかんたんに分離される。
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搾乳と乳加工
ヤクやウシのミルクを絞り(原文ママ)、長い筒型の撹拌器で撹拌してチーズやバターをつくる。チーズはヤクの皮袋に入れて保存し、バターはバナナやシャクナゲの葉で包むか、現在はビニール袋で包んで保存される。
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糞
路上では、小さな籠を背にした子供達が、上下する旅行者の馬、ロバ、ラバ、ヤク群の後を相争って追いかけ、家畜に早く糞をせよと催促しているかのように、家畜がバタバタバタと糞をすると、軟らかいほやほやと湯気の立っている糞を、われ先にと手づかみで背の籠に入れては、どこまでも追っていた。
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植物と動物
父の農場は広大で、土地もたくさんありました。家には馬、ディ(牝のヤク)、ヅォモ(ヤクと牛をかけ合わせた動物)と牛がいて、その面倒を見る召使いもいました。畑ではたくさんのものを育てましたが、主に小麦、大麦、豆、からしなどでした。
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食肉加工と部位名称
豚は新年の間に屠畜するので、屠畜するために屠殺屋を雇って家に来てもらいました。自分たちで殺すのは罪であると考えられていたからです。
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食肉加工と部位名称
時にはヤクや羊も屠畜しました。それらの動物を殺した後、二階の特別の部屋で肉を吊るして干しておきました。
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食文化
チベットの人達はいろいろなパンを食べます。入れ物に入れて蒸したり焼いたりするのと、かまどに入れて焼くものとがあります。ク・キというパンは、土器に入れて焼くのですが、じっくり炒めた玉ねぎとともに、二時間ほど火にかけっ放しにしておきます。また、ユ・マン・ホク・キはターメリックパウダーで赤く色づけされ、クルミと糖蜜が入っています。焼き上がりがとてもかわいらしく、食べる時はナイフで切り分けます。
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食文化
昼食には要望があればチョウ・トゥアンやラン・ファンも作りました。これはアムド地方独特の料理で、どちらも大麦だけで作ります。大麦を少量の水で溶き、濃いペースト状になるまで勢いよくかき混ぜます。
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食文化
それから時には油で揚げたツァンパを出しました。これには大麦、小麦、豆などの種類があって使用人たちには喜ばれました。というのも、これならば腹持ちがよいので、農場で重労働をしてもお腹が空かずにすむのです。
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