チベット高原万華鏡 生業文化の古今の記録を地図化する モザイク柄のヘッダ画像

チベット高原万華鏡テキストDB

「チベット高原万華鏡テキストDB」では、フィールド調査の記録や文献資料に記録された牧畜や農耕といった生業にかかわるテキストを引用し、日本語以外の場合は翻訳も添え、「搾乳と乳加工」「糞」「食文化」「服飾文化」などのカテゴリータグをつけて集積しています。地図上にはプロットできない情報を含め、民族誌や旅行記、史資料の中にバラバラに存在していた生業にかかわる情報を検索可能な形で統合して見える形にすることで、新たな研究を生みだすことを目指しています。

なお、本DBは進行中のプロジェクトであり、引用や翻訳に間違いが含まれている可能性があることにご留意ください。ご利用される場合は、必ず原典を確認してご利用いただければ幸いです。問題があれば、 「チベット高原万華鏡」とはに示したお問い合わせ先にご連絡いただければ幸いです。また、論文、著書などで利用される場合は、本DBを利用したことに言及いただければ幸いです。

「チベット高原万華鏡テキストDB」の使い方
« »
ページ: of 93
全 1844 件
161
食文化
また、めんを作るのはもちろんのこと、たくさんのパイ類、ロール、カンセ、ティ・モモも作っておきます。これらも全部天然冷凍させて、食べる日まで貯蔵しておきます。
162
食文化
この大がかりな作業をしている間、私達はチョウ・タンを食べます。そして私達が食べた後、乾燥させて、口の中におできのできている牛や羊などの動物にも与えます。乾燥したチョウ・タンは動物にとっては薬のようなもので、荒れて炎症を起こしている部分にこすりつけるのです。
163
宗教的観念
シーニンにはキーロンといって、さまざまな姿に変わる幽霊がいました。ある時は小さな男の子、またある時は女の子、かと思えば長い毛に覆われた猫だったりします。私が見たのは猫の姿で、とても長いヒゲと分厚い毛に覆われた、ふつうの猫よりは少し大きい感じでした。この幽霊には奇妙な習性がありました。私達の家にこっそりと入り込み、食べ物を何でも盗むのですが、お金は決して盗まないのです。
164
冠婚葬祭
それから私が乗るための馬は、親戚の人達が用意してくれました。嫁ぎ先の家が裕福であれば、花嫁を迎えるために贈り物をしてくれます。たとえば舅はよい馬をくれますし、姑は牛と牝のヤクを交配させたヅォモをくれます。ただしこのヅォモは花嫁のお母さんに贈られるものです。
165
毛と皮革
小舟は、……皮の張子舟で6,7枚のヤクの皮革を皮紐で縫い合わせて、その縫い目に水の染み込まないように漆を塗りつけ、……箱型の骨組に張られたものだ。骨組に使用されているのは、柳の細枝か、チベットで「ラ」と呼ばれる、河岸に繁茂する刺の多い矮樹の強靭な幹を割いたもので、……細枝と皮で造られるために、……この舟のことも、「コワ」という皮の名をそのまま使っている。
166
食文化
チュシュー付近では(魚を)食べる者もあり、捕えて干し魚としラサや往来のシナ人、ネパール人に売っている者もある。これらチベット人の魚の食べ方は、魚を生のまま平たい石の上で搗いてグチャグチャにし、それに塩と唐辛子をまぜて、手でよくもみ、ザンバーと一緒に食べる。
167
毛と皮革
ひとりの男が、天井から吊り下げたヤクの皮を棒切れでこすっては盛んに皮を鞣していた。棒切れには紐が結ばれ、その紐の一端は右足の指先にかけられ、右足を上げると同時に右手に持っている棒切れを高く上げ、左手で端を掴んでいる皮を、足を下してはその力で右手の棒切れでこすっていた。
168
食文化
この(ヤクの)皮袋はザンバーをこねる木椀代わりとなっていた。ザンバーをこの袋の中に入れ、それに少量のバター、チュラー等を加え、適当に茶を注いで、片手で袋の口を握りしめて、片手で袋をもむと、うまくザンバーはこねられる。……チベット人の間にはザンバーこねとして、この皮袋が非常によく用いられていたのである。
169
食文化
(シガツェではショーは豊富で安価で)ショーは2合、3合、4合入りの素焼きのつぼの中に作られ、近郊の農家の主婦や娘達が、早朝から籠に背負って集まって来た。彼女達は……ショー一杯を青稞一杯と交換して行く。また、ザンバー、小麦粉、肉類、バターと食料品の安いことはチベット一だろう。
170
食文化
シカゼの特産としては、蔵香と共に豆ソーメンがある。チベット内の商店の店先を飾っている豆ソーメンは、すべてシカゼ産で、遠くインド……ネパール……シナ人の商店にも姿を見せているのである。
171
毛と皮革
法会に用いるダンバルに張る皮も、この地(シガツェ)の特産の一つとなっている。皮は羊皮であるが、その鞣し方に秘伝があり、シカゼの皮鞣人の中でも、この太鼓用の秘伝を知っている者はわずかである。
172
食文化
わずかばかりの羊肉を刻むと、……肉の削りとられた羊の脚、肋骨等の骨を銅製の皿に入れ……平べったい大きな石の上にうつし、丸い大きな石でゴツンゴツンと骨をつき始めた。……鍋の中に移し入れ……小刻みにした肉片を入れる。若干の塩も投入され木蓋が覆せられた。……長いこと煮られた後、……ザンバーを……少しずつ振り落とす。……汁がどろどろになると、少量の大根の葉が投入され、蓋をして、また暫く煮られた。……今度は一塊りのバターが投入されて……チベット語で「トパ」というザンバー粥が作られた。
173
毛と皮革
羊毛で織られたこの織物は、チベットでは、「ナムブ」と呼ばれている。チベットの織機も日本と変わりなく、チベット語で「ハタ」、経糸を「ジュ」、緯糸を「ブン」、船型の梭を「チョンバ」と呼んでいる。
174
毛と皮革
羊毛を水でよく洗って、羊毛に着いている家畜の糞、沙、塵埃を落として乾かし、それを15センチ四方の木板に無数に針の植えつけられた2つの櫛で、よく羊毛を櫛けずり、「ブンチイ」と呼ばれる25センチくらいの軸木の先端に、円型の鉛を取り付けた紡錘を、中心軸の周囲に回転させ、糸をよっている。
175
服飾文化
各家庭で(織物の)染色も行なっているため、染料の需要の大きいこともこの国の特色だ。染料はすべてインドから輸入され、ラサ、シカゼ、ギャンゼ等の街は勿論のこと、どんな田舎の商店の店先にも必ず、色とりどりの染料が飾られていて、茶、綿布等に次いで、主要な輸入品である。
176
植物と動物
ツエマという灌木は、沙地によく密生し、高さ60センチくらいの、葉のない棘ばかりの灌木で、生のままでも、油をかけたようによく燃え、火力が強い。ザンバーにする青稞、豆、とうもろこし等を炒る燃料として、用いられている。
177
糞
茶を煮るの糞料だになし。僅かに昨年旧十月台地納爾土人の蔵より回りし時、彼等の駄馬が落せし糞を、小量ながら発見しつつ拾ひつつ進行して一日の燃料とす。
178
搾乳と乳加工
揚子江源流域においても、もともとヒツジの搾乳はさかんではなかったといわれる。現在でも、揚子江源流域の東側ではヒツジの搾乳はおこなわれていない。揚子江におけるヒツジの搾乳の歴史については、あたらしいとする説がみられる。ヒツジの搾乳時に、むかいあわせにした群れをロープで緊縛する方法はカザフ族やモンゴル族にまなんだというのである。現在でも、ヒツジの群れを所有しているすべてのテントが、ヒツジの搾乳をおこなっているわけではない。手間がかかるわりには泌乳量がすくない、というのが主要な理由である。
179
搾乳と乳加工
全体を通じてもっとも特徴的なことは、乳製品の製法とその名称につよい共通性がみられる点である。乳製品の名称においてはわずかな方言的な差異がみられるが、その製法に関してはまったく差異はない。その製法は、乳を乳酸発酵によってヨーグルト状の製品にしたあと、バター系列とチーズ系列の製品をつくるというものである。これ以外のバラエティをもった乳製品の製法がみられないという点は、とくにチベットの乳製品の特徴といえるだろう。
180
役利用
チベットの牧畜においては、ヤクが圧倒的に重要な位置をしめている。ヤクの毛はテントの素材となるだけでなく、ヤクの乳はもっとも基本的な食料の乳製品の原料となる。移動にあたって荷物の運搬をうけおうのは、もっぱら去勢ヤクの役割である。ヤクの存在がなければ、四〇〇〇メートルをこえる高原での牧畜生活の維持が不可能なことはあきらかであろう。このヤクに野生種との交配がみられるのである。家畜種と野生種とのあいだに自由な交配が成立するということは、家畜化の歴史があたらしいことをしめすものである。
« »
ページ: of 93